【ロシア語動詞のアスペクト】不完了体動詞と完了体動詞の違いと使い分け

ロシア語学習 動詞のアスペクト 完了体動詞と不完了体動詞の使い分け

ロシア語の動詞にはアスペクト(体)と呼ばれるものがあります。体は日本語にも英語にも存在しない概念なので、日本人のロシア語学習者がほぼ必ず躓くポイントです。私も例にもれず躓きました。この記事では、自分自身が躓いた点も踏まえ、ロシア語動詞の2つのアスペクトである不完了体と完了体の違いと使い分けについて詳しく解説します。

ロシア語動詞のアスペクト(体)とは?

英語には現在・過去・未来の3つの時制に加えて、過去完了形や未来完了形が存在します。しかし、ロシア語の時制には現在形・過去形・未来形の3種類しかありません。ロシア語で過去完了や未来完了などのより細かいニュアンス表現を可能にするものが、動詞のアスペクト(体)と呼ばれるものです。ロシア語動詞の体には不完了体と完了体の2種類があり、通常は対をなしていますが、中には不完了体もしくは完了体のどちらか一方しか存在しない動詞もあります。

ロシア語動詞の不完了体

不完了体動詞:進行・課程

不完了体動詞と完了体動詞の相違点はいくつかありますが、決定的な違いは現在形/現在進行形を表すことができるのは不完了体動詞だけという点です。完了体動詞を使って、現在形/現在進行形を表現することはできません。「〇〇している」ときたら、不完了体動詞と覚えておきましょう。過去形の場合も「〇〇していた、〇〇の最中だった」という進行・課程のニュアンスを表す場合は、不完了体を用います。

  • Он читает книгу.(彼は本を読んでいる。)
  • Моя мама готовит ужин.(私の母は夕食を作っている。)
  • Профессор разговаривал со студентом.(教授は学生と話している最中だった。)
  • Собака умирала.(その犬は死にかけていた。)

不完了体動詞:継続

瞬間的な行為ではなく、一定時間継続する行為を表すときは不完了体動詞を用います。「長い間、一日中」などの時間の継続を表す言葉が出てきたら、不完了体と覚えておきましょう。

  • Рабочие трудились долгое время.(労働者は長時間働いた。)
  • Он спал весь день напролёт.(彼は一日中寝ていた。)

不完了体動詞:繰り返し

繰り返し反復的に行われる行為に対しては、不完了体動詞が用いられます。「いつも、毎日、時々」などの頻度を表す副詞が出てきたら、不完了体動詞と覚えておきましょう。以下の記事も参考にしてみて下さい。
関連記事:頻度を表す副詞をまとめて覚えよう

  • Мои дедушка и бабушка ходят в церковь каждое воскресенье.(私の祖父母は毎週日曜日教会に通っている。)
  • Они иногда разговаривают по телефону.(彼らは時々電話で話す。)

不完了体動詞:経験の有無

「〇〇したことがある」のように経験の有無を表す時は、不完了体動詞を用います。「これまでに、今までに」などの言葉が出てきたら、不完了体動詞と覚えておきましょう。

  • Вы когда-нибудь видели привидение?「これまでに幽霊を見たことはありますか?」
  • Он не водил машину.(彼は車を運転したことがない。)

不完了体動詞:完了の意味を伴わない単なる行為の有無

  • Вчера он писал письмо.(昨日、彼は手紙を書いた。※書き終えたかどうかは分からない。)
  • Она делала домашнее задание перед ужином.(彼女は夕食の前に宿題をした。※やり終えたかどうかは分からない。)

ロシア語動詞の完了体

完了体動詞:行為の完了

ある行為が完了したことを表す場合は、完了体動詞を用います。

  • Студент прочитал книгу.(その生徒はその本を読み終えた。)
  • Мой отец умер.(私の父は死んでしまった。)

完了体動詞:一瞬の行為・現象

「一瞬何かを見た」のように瞬間的な行為や一瞬のうちに何かが起こった場合は、完了体動詞を用います。

  • Поезд внезапно остановился.(電車は急に止まった。)
  • Хлынула кровь.(血が噴き出した。)

完了体動詞:一回きりの行為・現象

反復性のない単発の行為や現象を表す場合は、完了体動詞を用います。

  • Они отправились во Францию на летние каникулы.(彼らは夏休みにフランスに行った。)
  • Мальчик нашёл труп.(少年は死体を発見した。)

複数の動作の同時進行と完了した動作の連続

「〇〇しながら、〇〇する」のように複数の行為を同時に行う場合は、不完了体動詞を用います。一つの行為を完了させてから、次の行為を行う場合は完了体動詞で表現します。

  • Он обедал и смотрел телевизор.(彼はテレビを見ながら昼食を食べた。)
    ⇒ 不完了体動詞を用いているので、同時進行の行為
  • Он пообедал и посмотрел телевизор.(彼は昼食をとってからテレビを見た。)
    ⇒ 完了体動詞を用いているので、完了した行為の連続

接続詞 когда の後に続く動詞の体

接続詞 когда は英語の when に相当するロシア語で「〇〇する時に」の意味ですが、不完了体動詞を伴う場合と完了体動詞を伴う場合では意味が変わってきます。
不完了体動詞 ⇒ ~している間、~している時に
完了体動詞 ⇒ ~した後に、すると

  • Он так усердно учился, когда другие веселились.(彼は他の人達が楽しんでいる間に一生懸命勉強した。)
  • Когда она увидела парня, то закричала.(彼女はその男を見るや悲鳴を上げた。)

Что ты делал? の答え方のルール

Что ты делал вчера?(昨日は何してたの?)

Я читал книгу.(本を読んでいたよ。)

делать のルール
※不完了体動詞 делать で質問された場合、不完了体動詞で答えるという基本ルールがあります。上記の会話で、たとえその本を読み終えていたとしても、完了体動詞の прочитать ではなく、不完了体動詞の читать で答えます。なお、このルールは делать に関するルールであり、全ての動詞にこういったルールがあるわけではありません。

この記事で解説したアスペクトの使い分けに必ずしもあてはまらない場合もあります。その都度文脈や背景などを考慮しながら、意味を考えていくことが大切だと思います。私もまだまだ混乱することばかりですが、お互い勉強頑張りましょう。以下の記事も参考にしてみて下さい。
関連記事:命令法の完了体・不完了体(СВ/НСВ)の使い分け