仮定法とは現実に反することや現実には起こりえない願望などを表現する際に用いられる文法表現です。一般的には「もし〇〇なら、〇〇」のような「もし」で始まる文章がそれに当たります。この記事では、ロシア語の仮定法について詳しく解説します。
ロシア語仮定法の基本
ロシア語で「もし〇〇なら、〇〇」を表現したい時、「если бы ~, (то) 〇〇 бы」で表します。то は省略されることがよくあります。「もし〇〇なら」の部分を条件節と呼び、それに続く文章を帰結節と呼びます。бы の位置は、条件節では通常 если の後に置かれ、帰結節では主語の後か、動詞/助動詞の直後が一般的です。仮定法では、条件文も帰結文も必ず過去形になります。
- Если бы он был здесь, я бы пнула его.(もしここに彼がいたら、蹴っ飛ばしてやるのに。)
- Если бы у него были деньги, он мог бы купить машину.(もし彼にお金があったなら、彼は車を買うことができるのに。)
直接法と仮定法の違い
「もし〇〇なら、〇〇」のような文章が全て仮定法とは限りません。仮定法とはあくまで「現実に反していること、現実には起こりえないこと」を表現するときに用いられる文法表現です。「もし〇〇なら、〇〇」という意味の文章であったとしても、それが現実に十分起こりえる事柄である場合は、仮定法を用いて表現することはできません。この場合は、直接法を用いて表現します。直接法では、条件文も帰結文も現在形で表します。
- Если начнётся ядерная война, что случится с нашими детьми?(もし核戦争が起こったら、子供達はどうなってしまうのだろう?)
⇒ 核戦争が起こる可能性は大いにあるので、仮定法ではなく直接法 - Если он поедет в Москву, она тоже поедет.(彼がモスクワに行くなら、彼女も行くだろう。)
⇒ 彼がモスクワに行く可能性がそれなりにあるなら、仮定法ではなく直接法
条件節のない仮定法
仮定法の文には必ずしも条件節を伴わない場合もあります。その場合は帰結文から仮定の意味を推測します。
- Без его помощи я бы не добился успеха.(彼の助けがなければ、私は成功できなかっただろう。)
- На вашем месте я бы поступил так же.(あたなの立場だったら、私も同じことをしただろう。)
帰結節のない仮定法
仮定法の文には必ずしも帰結節を伴わない場合もあります。その場合は条件文から仮定の意味を推測します。この用法は現実とかけ離れた願望や実現不可能な希望を表現する際によく用いられます。
- Если бы только он был здесь.(ただ彼がここにいてくれたら。)
- Если бы я была богата.(私が金持ちだったらなぁ。)
要望を丁寧に伝える仮定法
「もしよろしければ〇〇したいのですが。」のように控えめに要望を伝えたい時にも仮定法が用いられます。仮定法を使うことによって、ストレートに「私は〇〇したい。」と言うより丁寧で礼儀正しい響きになります。
- Я бы хотела пойти с вами.(よろしければ、ご一緒したいのですが。)
- Я бы хотела стакан воды.(できれば、お水を一杯いただきたいのですが。)