「私は〇〇が好き、気に入っている」という表現は日常生活でよく使われますね。ロシア語では「〇〇が好き」を表す表現は主に2パターンあり、люби́ть または нра́виться を用いて表します。どちらの言い方もよく使われるので必ずマスターしましょう。なお、люби́ть と нра́виться は互いに言い換え可能ですが、後者のほうが前者よりやや軽い感じの好きを意味します。英語の love と like に似たニュアンスです。
любить を用いた好意表現「A は B が好き」
любить の動詞変化
люби́ть は英語の love に相当する動詞です。日本語では「愛している。好きだ。」の意味になります。まずは люби́ть の変化を確認してみましょう。第二変化動詞で、かつアクセントが移動するので注意。
不定形 | я | ты | он/она/оно | мы | вы | они |
---|---|---|---|---|---|---|
люби́ть | люблю́ | лю́бишь | лю́бит | лю́бим | лю́бите | лю́бят |
「A (主格) любить B (対格) 」
ロシア語で「A は B が好き」は「A (主格) любить B (対格) 」で表します。
- Я люблю тебя.(僕は君を愛している。)
- Дети любят мороженое.(子供たちはアイスクリームが大好きだ。)
- Мэри любит Тома.(メアリーはトムを愛している。)※名前も格変化するので注意。Том の 対格は Тома です。
「本を読むのが好き」のように好きの対象が物や人ではなく行為の場合もありますね。その場合は、「A (主格) любить B (動詞不定形) 」で表現します。
- Она любит читать книги.(彼女は本を読むのが好きだ。)
- Мальчик любит плавать.(少年は泳ぐのが好きだ。)
「〇〇が好きではない」と好意の否定を表したい場合は、「A (主格) не любить B (対格、または動詞不定形) 」となります。
- Я не люблю яблоки.(私はりんごが好きではない。)
- Он не любит разговаривать.(彼は話すのが好きではない。)
「恋に落ちる、好きになる」の表現
ある瞬間に誰かに恋に落ちたり、何かを好きになったりすることがありますね。この場合は不完了体の любить ではなく、完了体の полюбить を使って表現します。
- Она полюбила вампира.(彼女は吸血鬼に恋をした。)
- Я никогда тебя не полюблю.(私は君を好きになることは決してない。)
нравиться を用いた好意表現「A は B が好き」
нравиться の動詞変化
不定形 | я | ты | он/она/оно | мы | вы | они |
---|---|---|---|---|---|---|
нра́виться | нра́влюсь | нра́вишься | нра́вится | нра́вимся | нра́витесь | нра́вятся |
「A (与格) нравиться B (主格) 」
нра́виться を用いた表現はちょっと混乱するかもしれません。нра́виться を用いて「A は B が好き」を表すと、「A (与格) нра́виться B (主格) 」となります。(※語順は変わることがあります。)つまり、好いている人を与格で表し、好かれている物・人・行為が主格になります。文法上の主語は B ですが、意味上の主語はあくまで A です。以下、例文。赤字が行為を持っている人 (与格) で、緑が好意を持たれている物・人・行為(主格)です。好きな対象が行為の場合は、動詞不定形で表します。なお、B が名詞単数形か動詞不定形の場合は、нра́вится (三人称単数形) で、名詞複数形の場合は нра́вятся (三人称複数形) になります。
- Мне нравится этот фильм.(私はこの映画が好きだ。)
- Тому нравится Мэри.(トムはメアリが好きだ。)
- Мне нравится гулять.(私は散歩が好きだ。)
- Мне нравятся эти картины.(私はこれらの絵が好きだ。)
なぜ好意を抱いている人が主語ではなく与格になるのかというと、нравиться という動詞は厳密には好きにさせる、気に入らせるという意味だからです。つまり、Мне нравится эта книга. は直訳すると「この本は私を好きにさせる。」という意味になります。しかし、それだと日本語としてはおかしいので「私はこの本が好きです。」と訳す以外ないのです。なお、なぜ 対格の меня ではなく与格の мне になるのかというと、再帰動詞は目的語に対格をとれないというルールがあるからです。(нравиться のように末尾が -ся で終わる動詞を再帰動詞と言います。)
「A は B が好きではない。」のように好意の否定を表すときは、「A (与格) не нра́виться B (主格) 」となります。
- Мне не нравится твоя девушка.(私は君の彼女が好きじゃない。)
- Им не нравятся их учителя.(彼らは自分たちの先生達が好きではない。)
- Моей маме не нравится готовить.(私の母は料理が好きではない。)
「好きになる、気に入る」の表現
今現在好きな状態にあるのではなく、ある瞬間に好きという気持ちが芽生えることを示す場合は、不完了体の нравиться ではなく、完了体 понравиться を用います。なお、「初めて行ったお店が気に入った、初めて食べたケーキが気に入った」のように初体験での好意を表現する場合は、通常 понравиться を用います。
- Тебе понравится Нью-Йорк.(君はニューヨークが気に入るよ。)
- Вам понравилась книга?(その本は気に入りましたか?)
「〇〇が欲しい」хотеть と хотеться
любить と нравиться と同じような使われ方をする動詞に хоте́ть と хоте́ться があります。どちらも「〇〇が欲しい」の意味ですが、後者の方が軽い感じの欲しいを意味します。хотеться は нравиться と同様、意味上の主語を与格で表します。
- Я хочу есть японскую еду.(私は日本食が食べたい。)
- Мне хочется есть японскую еду.(私は日本食が食べたい。)
- Сейчас я хочу принять ванну.(今、お風呂に入りたい。)
- Мне сейчас хочется принять ванну.(今、お風呂に入りたい。)
нравиться や хотеться のように語末が -ся で終わる動詞を再帰動詞と言います。詳しくは以下の記事を読んでみて下さい。
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