ロシア語には「否定を表す文章の主語や直接目的語が生格になる場合がある」というルールがあります。これを否定生格と呼びます。この記事では、否定生格について解説しています。
否定生格:否定形で主語が生格になる場合
存在の否定
「Aがない」のように何かの存在を否定するとき、否定生格が用いられます。このとき、主語が主格ではなく生格になります。
Здесь нет воды.(ここには水がない。)
ここで使われている「~がない」を意味する нет は、「いいえ」を意味する нет とは別のものです。混同しないように。
所有の否定
「A は B を持っている」というように所有を表現するときは、「У A(生格) есть B(主格)」と表現します。直訳すると、「A のところに B がある」となります。文法上の主語は A でなく、B ですので注意!
- У меня есть машина.(私は車を持っている。)
- У него есть старшая сестра.(彼には姉がいる。)
上記の例文を「A は B を持っていない」という否定形にしてみましょう。否定形では「У A(生格) нет B(生格)」になります。肯定文では、文法上の主語 B は主格でしたが、否定文では生格になります。つまり、A も B も生格です。
- У меня нет машины.(私は車を持っていない。)
- У него нет старшей сестры.(彼には姉はいない。)
過去形、未来形の場合も同様に否定生格が適用されます。このとき、主語の性・数にかかわらず、存在動詞 быть は常に中性形が用いられます。過去形の場合は было です。未来形の場合は、будет となります。
関連記事:存在動詞 быть の使い方(現在形・過去形・未来形)
- У нас не было денег.(私達はお金がなかった。)
- У них не будет будущего.(彼らに未来はないだろう。)
「誰も~ない、何も~ない」の表現
「誰もいない、何もない」はよく使われる表現なので、覚えておきましょう。
- Дома никого нет.(家には誰もいない。)
- В холодильнике ничего не было.(冷蔵庫には何もなかった。)
никого は никто の生格、ничего は ничто の生格です。
否定生格:否定形で目的語が生格になる場合
直接目的語を伴う否定文で、否定の意味を強調するとき、直接目的語が対格ではなく、生格になる場合があります。
- Я не помню его имени.(私は彼の名前を憶えていない。)
- Он не платил денег.(彼はお金を払わなかった。)
このルールは直接目的語に対格をとらない動詞には適用されません。
例:доверять(信頼する) ⇐ 目的語に与格をとる動詞ので、否定生格は適用されない。